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発達障害でも受けられる障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳の利点
2018/09/20
発達障害を持つ子どもが学齢期を終え、社会に巣立つ年齢になると、就職や社会生活などに不安を感じることも多いことでしょう。現在では、発達障害を持つ人も他の障害者同様に、社会福祉の枠組みの中でさまざまな支援が受けられます。この記事では、発達障害を持つ人の精神障害者保健福祉手帳取得について見ていきましょう。
- 精神障害者保健福祉手帳とは
- 発達障害と精神障害者保健福祉手帳
- 精神障害者保健福祉手帳で受けられる支援とメリット
- 発達障害で精神障害者保健福祉手帳をもらうには
- 精神障害者保健福祉手帳に関するよくある質問
この記事を読むことで、発達障害を持つ人が精神障害者保健福祉手帳を取得する方法やメリットについて知ることができます。ぜひ参考にしてください。
1.精神障害者保健福祉手帳とは
発達障害の人が受けられる福祉サービスについて見ていきましょう。
1-1.精神障害者保健福祉手帳は障害者手帳の1種
障害者手帳には3種類あり、それぞれ身体・知的・精神的な障害があることを証明するものです。福祉サービスを受けるために利用します。そのうち、精神的な障害がある場合に交付されるのが「精神障害者保健福祉手帳」です。
1-2.対象者
対象となる方は精神疾患により日常生活への制約がある方です。いずれも各精神疾患の初診から6月以上経過していることが条件となります。対象となる疾患は以下を参照してください。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- その他の精神疾患(ストレス関連障害等)
1-3.等級
手帳の等級は3つに分かれています。
- 1級:精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能たらしめる程度のもの(おおむね障害年金1級に相当)
- 2級:精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの(おおむね障害者年金2級に相当)
- 3級:精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、または日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの(おおむね障害年金3級に相当)
出典:厚生労働省
2.発達障害と精神障害者保健福祉手帳
発達障害のある人は精神障害者保健福祉手帳を取得できるのでしょうか? 詳しく見てみましょう。
2-1.発達障害でも取得できる
前述のとおり、精神障害者保健福祉手帳は何らかの精神障害を持つ人のための手帳です。制度上、発達障害専用の手帳はないため、発達障害の人は精神障害者保健福祉手帳を申請することになります。2010年に改正された障害者自立支援法で、発達障害が精神障害の対象者になることを明確化したことから、発達障害の人も同手帳を取得することができるようになりました。
2-2.療育手帳との違い
3つの障害者手帳のうち、知的障害がある人に交付されるのが「療育手帳」です。主に幼少期に交付されることが多く、知能指数(IQ)がおおむね75以下の人が対象となります。発達障害の場合は、IQ90でも療育手帳の対象となる場合があるようです。判断基準は地域によっても異なるため、詳しくは居住地の児童相談所へ問い合わせてください。また、知的障害と精神疾患の両方を有する場合は、両方の手帳が受けられます。
2-3.取得基準、判定基準など
精神障害者保健福祉手帳を取得するには、精神科への受診から6か月以上経過している必要があります。これは、一定期間通院して症状が続けて現れていることを医師が確認する必要があるためです。
判定基準は自治体にばらつきがあります。「どのような症状が現れているか」「日常生活や社会生活を送るうえでどんな困難があるか」「総合的に考えてどの程度の障害の重さか」などにより判定されるようです。
3.精神障害者保健福祉手帳で受けられる支援とメリット
精神障害者保健福祉手帳を取得するとさまざまな支援やサービスが受けられます。詳しく見ていきましょう。
3-1.どんな支援やサービスが受けられるか
手帳の取得によって受けられるメリットには以下のようなものがあります。
- 税金:所得税・住民税の控除、相続税の控除など
- 公共料金:NHK受信料の免除、上下水道料金の割引
- 就労:障害者雇用で就職することができる、障害者職場適応訓練の実施
- 民間サービス:鉄道・バス・タクシー等の運賃割引、携帯電話料金の割引
- 手当支給:福祉手当、通所交通費の助成、軽自動車税の減免
- その他:公営住宅の優先入居
3-2.デメリット
厚生労働省は、「手帳を持つことで不利益をこうむることはありません」との見解を明示しています。手帳を持っていることによる偏見や差別を心配する声もありますが、職場などでも手帳の有無を公表する必要はありません。また、手帳はいつでも返納することができます。
このように、実質的なデメリットはありませんが、唯一あるのは心理的なものでしょう。「自分は障害者になってしまう」という抵抗感や「手帳を持っていることを知られたくない」という不安感がデメリットといえます。
しかし、前述のとおり手帳の所持を公表する必要はありません。手帳を持つことによるメリットを考えて、気持ちを切り替えましょう。
4.発達障害で精神障害者保健福祉手帳をもらうには
発達障害の人が精神障害者保健福祉手帳を交付してもらうための方法を見ていきましょう。
4-1.申込先
手帳の申し込みは市町村役場で行います。障害者支援課の窓口を訪ねましょう。
4-2.手続きに必要なもの・書類
以下のものを用意しましょう。
- 申請書(マイナンバーの記載が必要)
- 診断書または障害年金を受給している場合には証書の写し
- 本人の顔写真
- 印鑑
4-3.申し込みの流れ
手帳の交付を受けるまでの流れは以下のとおりです。
- 通院(6か月以上)
- 市町村窓口で申請書類を受け取る
- 医師に診断書を記入してもらう:発達障害の場合、必ずしも精神科である必要はなく、精神科以外でも受診している専門の医師の診断書が有効
- 申請書類の提出
- 審査・等級の決定
- 手帳の交付
4-4.参考:精神障害者保健福祉手帳に関するページ
静岡市の精神障害者保健福祉手帳に関するページです。参考にしてください。
5.精神障害者保健福祉手帳に関するよくある質問
精神障害者保健福祉手帳に関するよくある質問と回答をまとめました。
Q.精神障害者保健福祉手帳を受けるには年齢制限はありますか?
A.年齢の定めは特にありませんが、支援の内容から、自立して生活を営む18歳以上の年齢になってから申請するケースが多いようです。
Q.精神障害者保健福祉手帳に有効期限はありますか?
A.手帳の有効期限は交付日から2年です。2年ごとに診断書を添えて更新手続きを行ってください。
Q.手帳の申請は本人でないとできませんか?
A.家族や医療機関関係者など、代理の人が申請することも可能です。
Q.障害者手帳と一緒に障害年金の申し込みもできますか?
A.障害者手帳と障害年金とは異なる制度です。障害者年金は年金事務所に申請してください。
Q.申請から交付までどのくらいの期間がかかりますか?
A.新規で申請する場合は、申し込みからおおむね1~2か月です。
まとめ
発達障害でも障害者手帳を取得することにより受けられるメリットはたくさんあります。制度をうまく利用して社会生活や日常生活の困難を少しでも減らしていきましょう。