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発達障害の合理的配慮とは? 事例集を参考にして対応を知っておこう
2019/01/28
教育を受ける権利は、発達障害・定型発達にかかわらず、誰もが平等に有しているものです。発達障害の児童がこの権利を享有・行使するためには、学校などに対して発達障害への理解や合理的配慮を求めることが大切です。
この記事では、合理的配慮とはどのようなものなのか、学校などではどのような配慮をしているのかなどについて見ていきましょう。
- 合理的配慮とは?
- 合理的配慮の事例集
- 学校などに合理的配慮を求めるためにできること
- 発達障害や合理的配慮でよくある質問
この記事を読むことで、発達障害のある子どもに対する合理的配慮についてよく分かります。合理的配慮の具体例などを参考に、学校や社会でスムーズな生活を送ることができるように環境を整えてもらいましょう。
1.合理的配慮とは?
そもそも合理的配慮とはどのようなものなのでしょうか?
1-1.合理的配慮は障害者差別解消法により義務づけられている
障害者差別解消法は、2016年4月に施行された法律です。発達障害の子どもも定型発達の子どもと平等に教育を受け、一人ひとりの特性に見合う適切な支援を行うために、合理的配慮を義務としています。
とはいえ、合理的配慮への理解が不十分な学校もまだ少なからずあるのが現状です。保護者からきちんと発達障害や合理的配慮について説明をしなければならないことも多いでしょう。
1-2.特性に適した環境に変えてもらう
発達障害の子どもは、それぞれ特性が異なります。特性に見合うクラスに転籍する・入学前に希望を出すなどの準備をしておけば、学習環境に対する不安も和らぐでしょう。発達障害では、一般のクラスでは学習や集団行動についていくことが困難な場合もあります。過ごしにくさを感じることから、ストレスや恐怖心を抱く・不登校になるなどのケースもあるでしょう。状況を見て、一般クラスから通級指導教室や特別支援学級などへ環境を変えることも可能です。学校と家庭が密に連携し、学習に集中できる環境を整えましょう。
1-3.合理的配慮は長所を伸ばして育むことを目的としている
合理的配慮の考え方は、発達障害のある子どもの特性を長所として伸ばし、心身を健やかに育むことを目的としているのです。学力の向上だけでなく、自己肯定感を高める、自立して社会参加する、多様な人格の尊重・人とのかかわりを深めるなど、人としての成長を後押しします。特性に適した環境と対応により、学習意欲が増して自信をつけることができ、コミュニケーション能力や社会への適応能力も上がるでしょう。
1-4.合理的配慮がなされないと罰則が科される場合もある
障害者差別解消法では、条項が守られない場合に罰則を定めているのです。学校などが保護者から合理的配慮を繰り返し求めても改善せず、不透明な対応を続け、さらに、行政に対しても報告を怠る・虚偽の報告をしたなどの場合、20万円以下の過料が科される罰則があります。
2.合理的配慮の事例集
合理的配慮では、具体的にどのような対応をしてもらえるのでしょうか?事例を交えて考えていきます。
2-1.集中して文章を読むことができる工夫をする
1文字ずつならきちんと読むことができても、文章になると読み飛ばしをしてしまうというケースがあるでしょう。1行ずつ集中して読むことができるように、隣り合う文章を隠すスリットを使用するなどの取り組みもなされています。教材などの文字も、読みやすさを意識した大きさ・字体・色・行間となっています。
2-2.図や絵を活用して理解を深める
計算が不得意な場合、頭の中だけで数式を理解するのが困難なケースが多いでしょう。そのような場合には、図や絵を活用し、視覚からたくさんの情報を得られ理解しやすくする工夫が考えられます。穴埋め形式や解答に導くヒントカードを用いるなど、計算問題に取り組みやすい学習方式を導入している学校もあるようです。計算機を使った学習が行われることもあります。
2-3.集中力が続く環境に改善する
視界に入るもの・聞こえるものに意識が傾いてしまい、集中力が持続しない子どももいるでしょう。やるべきことへの意欲が低下してしまうため、ロッカー・棚・掲示物に目隠しをし、屋外の様子が見えないようカーテンを引くなど、授業に集中して取り組むことができる環境に改善するケースもあります。
また、座席を前方にして先生が話しかけやすい位置にする場合や、後方が気になって集中できないようなら一番後ろの席にする場合もあるでしょう。一人ひとりの特性を見ながら、適切な環境調整をしているのがポイントです。
2-4.落ち着ける場所を用意する
学校行事など普段と違う雰囲気を敏感に感じ取り、パニックになる・攻撃的になるなどの子どももいるでしょう。音に対する刺激・通常のスケジュールと違うことへの不安・広い場所が苦手などの理由から起こるものです。
合理的配慮では、感覚を刺激しないよう、落ち着ける場所を用意するケースがあります。また、学校行事の流れやスケジュールが理解できるよう、待機時間が分かるタイマーやカードを用いた視覚的手段で、行事へスムーズに参加できるように工夫している学校もあるようです。先生がこまめに声かけをするなど、抱えている不安を取り除き、できたときはしっかり褒めるなどのフォローも重要です。
3.学校などに合理的配慮を求めるためにできること
障害者差別解消法で合理的配慮が義務づけられていても、保護者から学校などに対して希望を伝え、理解を求めることが大切です。相談先などを見ていきましょう。
3-1.特別支援コーディネーターに相談する
発達障害の合理的配慮は、担任の先生だけでは難しいものです。学校全体でチームとなり、子どものフォローを行うことがポイントになります。各学校では、特別支援コーディネーターが設置されている場合があり、学校と家庭の連携窓口になってくれるでしょう。事前に連絡をし、相談可能な日時などを聞いておくと安心です。
3-2.自治体の障害者相談窓口を利用する
自治体では、障害者相談窓口を設置しており、悩み・不安・差別解消などへの取り組みを行っています。保健福祉事務所が窓口になっている場合や、差別解消推進員を配置している場合もあるでしょう。不安は抱え込まず、小さなことでも相談することが大切です。
3-3.診断書などを提示するとスムーズに対応してもらえる
発達障害は、さまざまな特性があります。それぞれの特性に合う対応を求めるためには、医師の診断書や知能検査結果などを学校に提示しましょう。医師からどのような対応が望ましいかなどのアドバイスをもらい、サポートブックなどを作って渡す方法もおすすめです。対応や環境改善について考えてもらいやすくなります。
4.発達障害や合理的配慮でよくある質問
発達障害や合理的配慮に関する質問を集めました。
Q.合理的配慮の範囲や対応は、学校ごとに異なるものなのか?
A.はい、異なります。設備・人員・予算などの問題があるからです。自治体によっては発達障害などのバックアップに力を入れている場合もあり、ケアが手厚い学校もあります。まずは相談をし、希望や特性を詳しく伝えることが大切です。
Q.合理的配慮を求めるとほかの生徒に迷惑がかからないのか?
A.合理的配慮を行うことで、定型発達の子どもにも好影響を与えることができるでしょう。分かりやすい授業・集中しやすい環境に改善されるため、学力の全体的な底上げにつながります。
Q.発達障害の疑いで、確定診断がされていない場合はどうすべきか?
A.診断されていない場合でも、不安や困りごとなどがあれば、先生や学校に詳しく伝えておきましょう。特に、音などに過敏な反応を示す・パニックになる・じっと座っていられないなどの特性は、事前に情報があるだけでスムーズな対応ができるものです。
Q.合理的配慮の内容を決めるにあたり、学校ではどのようなことを計画するのか?
A.学校では、特性や発達段階を見て必要とするものは何かを考え、体制面・費用面を考慮した上で、教育支援計画を練ります。教育支援計画は、子どもが継続して適切な教育を受けるために重要なものです。学校内と学校間連携のツールとして教育支援計画を共有し、チームで子どもをフォローしてもらえます。
まとめ
2016年4月に施行された障害者差別解消法により、発達障害への合理的配慮をすることが義務づけられています。発達障害は特性がそれぞれ異なるため、一人ひとりに適した対応をしてもらうことが大切です。特性や希望を具体的に伝え、学校全体で支援してもらうようにしましょう。合理的配慮については、特別支援コーディネーターや自治体の障害者相談窓口を利用する方法もあります。